大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)660号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔説明〕立木所有権変動の対抗要件たるいわゆる「明認方法」としては、どの程度のものが要求されるのであろうか?

それはもとより各事案毎に具体的に決せらるべき問題であるが、その判断の基準を判例の集積に期待することは不可能ではない。その意味において、この問題に関して判例の果す役割は大きい。本判決は、結論としては原判決の審理不尽をいうにすぎないが、その理由の中に、明認方法とはいかなる程度のものであるべきかについての判断が、ある程度明らかにされていると思われるので、紹介しておきたい。

本件は、某山林に生立する「栗立木の内枕木適材全部」を被上告人が訴外人から買い受けて所有権を取得したが、何ら明認方法を施さない中、上告人が二重に右訴外人からこれを買い受け、現場に伐採小屋を建設しかつ公示札を立てて伐採事業を始めたところ、被上告人に対し右立木および伐木等の処分禁止仮処分をしたので、上告人から被上告人に対し、右立木等の所有権確認を訴求した事案である。

一審は、上告人のなした作業小屋の建設等をもつて明認方法として十分と認め上告人の請求を認容したが、原審は反対の判断を示した。すなわち、

「第一審原告(上告人)は、現場に栗立木所有権が第一審原告に移転した旨の公示札をたて、かつ伐採小屋を建設して立木の伐採枕木の製造に着手し、栗枕木千二百本、枕木原木六百本を製造し、これに第一審原告を標示する刻印を押捺した旨主張するけれども、伐採をもつて所有権取得の公示方法ということはできないし、右公示札が巾四寸長さ二尺の板に「与志本合資会社(上告人)枕木生産作業場」と墨書し、地上約四尺の高さの棒に針付けしたもので、しかも右公示札は一本しか立てられなかつたことは第一審原告の自ら認めるところであつて、右の事実と証拠保全における検証の結果に徴すれば、右公札および作業場の建設をもつてしては、係争栗立木が第一審原告の所有であるかどうか、およびその取得の範囲を明認することができないから、これをもつてはいまだ前記公示方法を施したものとはいえず、したがつ第一審原告は、係争立木の所有権取得をもつて第一審被告に対抗しえないものといわねばならない。」

右判断の違法を主張した上告理由を容れて、最高裁は次のように判示した。

「原判決の引用する検証調書の記載ならびにその附属図面によれば、本件証拠保全のための検証当時、本件立木現場への上り道路の入口に、原判示のごとき公示札が立てられ、約一間をへだてて、間口二間奥行三間の杉皮葺の山小屋が存在し、右製材作業現場であつた痕跡の歴然たるものがあり(上告人が……右立木の伐採に着手し、判示仮処分決定前に栗枕木約千二百本、栗枕木原木約六百本を生産した事実は、原判決の確定するところである。)、そして右検証当時には、すでに生産せられた枕木およびその原木は、本件立木の存在する現場の諸所に集積せられて一間ないし五、六間或は二十間を距てて点在し、かつその沈木原木の多数にはその末口に上告人を表示するための刻印が押印されていた事実を認めることができる。以上の事実関係が認めめられる以上、さらに、本件係争栗立木と右伐採小屋並びに公示札の場所的関係右立木の林相或は所在場所の地理的状況、もしくは前記伐採原木の点在の模様等を精査するにおいては、当時係争立木は何人がこれを伐採し、何人の実力支配下に在つたか、さらにその範囲をも、外観上識別しうる状況に在つたことを認めえないとはかぎらないのであつて、原判決がこれらの諸点について十分の審理をしないで、漫然前敍のごとく判示して、上告人主張にかかる方法をもつては未だ立木の所有権取得を第三者に対抗するための明認方法として不十分であるとして、上告人の請求を排斥したのは、審理不十分の違法を免れないものといわなければならない。」

(青山調査官)

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